“事故物件”って知ってる?──日本独自の“ワケあり物件”カルチャーに迫る

日本で部屋探しをしていると、たまに見かける「事故物件(じこぶっけん)」というワード。
英語では「stigmatized property」と訳されることもありますが、
実際にはもうちょっと複雑で、ちょっと怖い話でもあります。
事故物件とは?
ざっくり言うと、 「過去に人が亡くなった部屋」 のこと。
それが病死であっても、事故であっても、自殺や殺人事件であっても、
“その部屋で亡くなった事実”があれば、事故物件とされる可能性があります。
ただし、日本の事故物件に対する定義はあいまいな部分も多く、
「建物内で亡くなった場合」「敷地内の場合」「自然死かどうか」など、扱いが分かれるケースも。
そのため、“知らずに借りていた”というケースも実際に起きています。
「なんか空気が重い気がする」「やけに家賃が安いと思ったら…」と後から気づくパターンも存在します。
有名な事故物件サイト『大島てる』
そんな事故物件を地図上で検索できる日本の有名サイトが、 『大島てる(おおしま てる)』 。
なんと、全国の事故物件をユーザー投稿と編集で可視化してしまった超リアルな情報サイトです。
地図上には“火のマーク”がついており、それが事故物件を示しています。
クリックすると、事件の内容や発生日まで確認できるため、怖いもの見たさで見る人も続出。
事故物件サイト『大島てる』
決して生きては出られない……実在した“事故物件の聖地”──大島てる氏が語った、ある3階建てアパートの実話
事故物件情報サイト「大島てる」の代表・大島てる氏が週刊文春で語ったのは、
どの駅からも離れた住宅地にひっそりと建つ、3階建ての小さなアパートについて。
部屋番号もなく、各階に1室ずつ。1階には大家の住居と仕事場、2階と3階は賃貸という簡素な構造のこの物件では、
わずか4年の間に屋上から1階まで全フロアで人が亡くなるという異常な出来事が連続して発生しました。
屋上では首吊り自殺。3階では、住人同士の酔った末の喧嘩が殺人事件に発展。
1階では大家の女性が刺殺され、その犯人は2階に住む住人で、後に埼玉の山中で自殺していたことが判明します。
こうした不可解な連鎖を受け、大島氏はこの建物を「事故物件の聖地」と呼びました。
物件は現在も取り壊されておらず、 1階は業者の資材置き場として再利用 されているそうです。
なお、この物件から “唯一生きて出た”人物は、3階で殺人を犯し刑務所に入った男性 のみだったとも語られています。
詳しくは、週刊文春の記事で語られているので、興味のある方はこちらから。
週刊文春「決して生きては出られない……大島てるが「事故物件の聖地」と呼ぶ“惨劇アパート」 (https://bunshun.jp/articles/-/13274)
※画像はイメージです
法的にはどうなってるの?
日本では、不動産業者が「心理的瑕疵(かし)」のある物件──つまり、事故物件に該当するような情報を
次の入居者に告知する義務(告知義務) があります。
ただし、いつまで遡るべきか、どの程度の情報を伝えるべきかについては法的な基準が明確ではなく、
「何年前の出来事まで伝えるべきか」「事件の内容によって義務は変わるのか」 といったグレーな部分も多いです。
2021年に国土交通省が出したガイドラインでは、
「自然死や孤独死は原則告知不要」「自殺・殺人などは一定期間は告知義務あり」などの方向性が示されましたが、
結局のところ、不動産会社や大家の判断に委ねられているのが現実です。
なぜ安い?なぜ住む?
事故物件は、やはり一般的には避けられる傾向が強く、 家賃は相場の2〜5割ほど安く設定される こともあります。
中には「破格すぎるだろ…」と感じる物件も。
それでも住む人がいるのは、もちろん 予算の都合 もありますが、
「気にしないタイプ」の人や、「お化けよりゴキブリの方が怖い」という人もいたりします。
さらに最近では、 事故物件に実際に住んでみるYouTube企画 なども増え、
興味本位やコンテンツ目的であえて選ばれるケースもあります。
一種の“住んでみた系チャレンジ”のような扱いを受けるようになってきているのです。
観光客にとっての事故物件とは?
短期滞在ではあまり関係ないように思えますが、 Airbnbでも事故物件が紛れている可能性はゼロではありません 。
気になる方は、事前に「大島てる」で住所を調べてみるのも面白いかもしれません(ただし、情報の正確性は保証されていません)。
また、 事故物件を実際に買い取り、そこに一晩滞在してもらうといったイベントを開催 する”ANNYA”という団体もある。
実際に体験したい方は、自己責任で参加してみるのもいいかもしれません。
なおANNYAから課せられたクエストをクリアすると参加費が全額返金となる。
RAW JAPANまとめ
幽霊の存在を信じるかどうかは別として、
日本では「部屋の過去」も物件選びの判断材料になるというのは、なかなかユニークな文化です。
ちなみに私は、昔すごく安い物件を見つけて「お得すぎる!」と思ったんですが、調べたら“大島てる”でしっかり🔥火のマークがついてました。
……結局その部屋は、友人に譲りました(今のところ無事に暮らしているそうです)。